今記事のタイトルは、やりがいにあふれる介護タクシービジネスを起業(開業)しようと考えている人に、この運送事業の現実を分かりやすく問うてみたものです。煽りすぎでもなんでもなく、こういう日は必ず訪れるんですよ。
介護タクシーは国民の税金と40歳以上が納める保険料が原資の介護保険サービスではないので、利用者負担は大きい…という前提で顧客から選ばれなければなりません。選ばれなければ売り上げはゼロ、利益を生み出し続けなければ即廃業です。
ビジネスとして当たり前すぎるお話ですね。
なんちゃら法人のように公的な補助金や自治体からの支援が手厚く補償されているわけでもなく、利益に対してかかる税金の優遇なども受けられません。
「儲かることを前提」としている営利事業ですから、売上獲得が何よりも大事なわけです。ですが、安定的に売り上げを獲得するにはハードルが高い業種だといまでも痛感しています。
そのリアルな現実をお話ししましょうか。
介護タクシー売り上げ¥0・¥1,000の現実(リアル)
その日は午前中1件のみの運行。
午後に入っていた予約も突如としてキャンセルになりました。
このまま定時を迎えそうだな、、と思っていた矢先、「近くのスーパーまで買い物行きたいですけど、大丈夫ですか?」と、新規の介護タクシーの運行依頼がはいりました。
その方は以前にもご利用された方でした。
電話で予約内容をうかがう限り、運賃/サポート料金含めても1000円の売り上げだという事はすぐに把握できました。
さぁ、介護タクシーを開業しようと志して、少しでも有益な情報を集めようとこのブログにたどりついたそこの貴方。
仕事無かったなぁ 今日は営業終了だな…と思っていた矢先の売り上げ1000円のご依頼、貴方ならどうしますか。売り上げが大したことないから、「すいません、今日の営業は終了です。」と、お断りするのでしょうか。
何が言いたいかと言うと、その顧客がもたらしてくれる売り上げ(数字)だけに捉われすぎると、この仕事は長く続けられません。
たとえ¥1,000の売り上げだったとしても、数字以上の充実感と感動と学びが得られることも多々あるからです。さぁ、その¥1,000の運行内容とはいったいどのようなものだったのでしょうか。
介護タクシーの存在意義は障害者高齢者の黒子に徹することだ
片麻痺のお客様は若くして脳卒中で倒れ、週の半分はデイサービスに通いつつ現在お一人で暮らしている方。自分でやれることは自分でやろうという気概のある方なんだなと、介護タクシー車内の会話からお見受けできました。
倒れた直後は、その絶望感にさいなまれて打ちひしがれていた時期もあったことでしょう。
しかし、その人にだけ訪れる壁や障害や不幸は結局のところ、時間をかけて少しずつ受け入れ、自分自身で乗り越えるしかないのです。お客様はその気概を感じさせる方でした。
以前介護タクシーをご利用されたときは杖を使わないと歩行に不安を抱えていらしたので、私が売店で買い物かごを持ってお客様の指示に従い商品を入れ、レジカウンターに買い物かごを差し出す付き添い介助を提供しました。
お客様は片手でやりにくそうにボディバッグのチャックを開け・財布を取り出し・お金をなんとか支払い、2~3㌔の買い物袋を私が持ってお客様の自宅玄関まで運ぶ、、、、という運行内容でその日は営業終了。
3回目の介護タクシーご依頼を承った時、
お客様が杖を使っていないことに気づき、
「あれ?今日は杖持ってないんですね。」
と尋ねると。
ああ、なるべく杖を突かないで歩く練習してるんだよね
とさわやかに呟かれたではないですか。
とはいえ、万が一のつまづき転倒も考えられますから、私は常にそばに寄り添いながら買い物同行をサポート。そのときは私の肩に手をかけながら歩いていたのですが。
その時ふと、私の口からこのような言葉が漏れ出たんです。
お客様、素晴らしいですね。杖を突いて歩くことに慣れてしまうと、備わっていたバランス感覚や体幹力が鈍っていくんじゃないかなと思うんですけど。その熱意に感動しました。
お客様の当時の年齢は40代半ばから50代のまだまだお若いです。
何気なく出た私の発言がお客様にとってすごく腑に落ちたようで、ご利用4回目の買い物同行ではお客様自身が
買い物袋も自分で持つ!
とアツい気持ちを見せつけてくれまして、たどたどしい足取りながらも、ほぼご自分の力で買い物を済まされたのでした。(杖歩行なし、店内移動はカートを歩行器代わりに代用しながら)
その時の私のサポートは、万が一の転倒を想定した付き添い介助とお客様がどうしても出来ないことへの補助的介助に徹しました。
(膝下に陳列しているお菓子を取ったり、購入したい物品場所への先回り誘導など)
お客様の自立心あふれる熱意と実行力を目の当たりにした時に、このお仕事に携われてほんとよかったなと思うのです。
売り上げも大事です。
利益はもっと大事です。
ですが、売り上げ¥1,000をもたらすお客さまとの触れ合いから、ご自分なりに現状を改善しようと奮闘されている瞬間空間を共有できることは、かけがえのない財産だと考えるのです。
あの時の突然のご依頼をお断りしていたら、このような瞬間に立ち会えなかったでしょう。
お客様の日常生活、時には非日常生活(ライブ・お祭り・旅行など)の目的を達成するために必要な運行と介助を提供して、お客様本人とご家族の支えにとなれるタクシーが介護タクシーの存在意義です。
華やかな仕事ではないけれど、お客様の外出を支える黒子的な役割を演じられるのです。この役割に幸せと醍醐味を感じれるかどうかが経営継続のポイントになります。
もちろん奉仕の理念だけで事業は継続できません。
お客様に喜ばれてこちらもしっかりと儲ける、という流れが一番望ましいのです。
しかしながら、お客様を運行回数1回・2回とか、この人の運行収入はいくらだから予約は受けないとか、単なる数字の概念でしかとらえられない人は介護タクシービジネスに向いていないと思います。
介護タクシービジネスに向いている人は、稼ぐため(自分本位)に障害者/高齢者の外出サポートをどれだけ丁寧に・快適に・ストレスフリーで提供できるかを考え抜ける相手本位の人です。